ガチ漫画初心者が、10作描いてマンガでデビューするための方法(リアル)

14年間漫画家志望者と一緒に短編漫画を作り続けてきた私が本気を見せます。なんて。見てね♡

1作目 2ページ漫画を本気で描く その1

こんにちは。いるかMBAの田中裕久です。今日は天気が良く、外は光がさんざめいていますがみなさまいかがお過ごしでしょうか?私はようやく風邪も治りお仕事全快な感じです。

 

さて、2回めはいよいよ漫画を描きます。画材の用意はよろしいでしょうか?

 

①小さなことからコツコツと

 

以前、「短編漫画の描き方」という本を書いた時に、最初2ページ漫画の作成を提案したら「そんな簡単なことから始めるのかよ」的なレビューがありました。確かに、「スラムダンク」31巻と比べると2ページ漫画はたかが知れているし、そこで表現できることはかなり限られています。ただし、長年漫画家志望者を見てきた私からすると、こういう小さな仕事を本気でやる人、熱中せざるを得ない性分の人は、伸びます。逆に、こういう小さいことを軽んじる人は伸びません。

 

以前、いるかMBAに「トーンを削ってみたいから漫画を描きたい」という生徒さんが来ました。その生徒さんは、とにかく、漫画の画面をトーン処理で見ています。この方は画面濃度・白黒バランスの感覚が非常に優れていて、伸びました。プロの漫画家になり連載を勝ち取りました。2ページ漫画の描き込みも尋常じゃなく、もちろん下手なのですが、その生徒さんなりのこだわりと試行錯誤が見えて、教えていて楽しかったです。

 

もちろん、みなさんが2ページ漫画の職人になる必要はないのですが、漫画は「凝り性」な人に向いている創作物です。小さなことからコツコツと。決してバカにしないで挑戦してみてください。

 

②アイデア出しから始めましょう

 

それでは、2ページ漫画の作り方です。まず、アイデア出しをします。2ページは8~12コマぐらいの漫画ですから、描けるのはワンシチュエーションのコントです。ワンシチュエーションで描ける題材を見つけましょう。

私は教室の生徒さんには、まず「勘違い」でアイデア出しをしてみましょうとサジェストします。というのも、「勘違い」は、人間の思考の中で、幅が広い現象なのでアイデアの出しがいがあるからです。

例えば、「うれしい勘違い」。給料日まであと10日もあるのに財布にはお金がほとんどない。あと10日はご飯抜きだなと思っていたら日付を間違えていてお給料が振り込まれている。これはうれしい勘違いです。

 

例えば、「悲しい勘違い」。好きな子に呼び出され、告白されるんじゃないかと思い、かなり幸せな気分で体育館裏に行ってみると、クラスの女子全員がいて、「お前は目線が常にキモイ」と言われる。これは悲しい勘違いです。

 

例えば、「ゾッとする勘違い」。後姿から、友だちだと思い込んでカンチョーをしたら、人を間違えていて学年で一番怖い人だった。これはゾッとする勘違いです。

 

のような感じで、「勘違い」にグラデーションを付けて、アイデアをどんどん出していきます。これを5~10個出してみましょう。

 

③最初に出て来るアイデアはたいていベタ。アイデアを仕分けしよう

 

これがとっても大事です。人間は、思考しやすいところからアイデアが出て来るので、最初に出て来るアイデアはたいていベタです。例えば、勘違い初心者の方にアイデア出しをしてもらうと、ほとんどの場合、男かと思ったら女だった(あるいはその逆)的なアイデアが出てきます。これは、よほど素晴らしいひらめきがないと、「見たことがあるアイデア」になります。

勘違いしないでほしいのは、私は「ベタなアイデアを出さないで欲しい」と言っているのではないということです。プロだって、ベタなアイデアから発想します。そうではなくて、最終的に「ベタなアイデアを選択しないでほしい」と言っているのです。そのためのアイデア出しであり、1つの作品に5~10個のアイデアを出すのもそのためです。

これは、みなさんの今後の漫画家人生を左右する大きなことです。ストーリー上、1つのアイデアが必要な場面で必ず複数のアイデアを出し、ベタなアイデアを選択しない癖をつけましょう。

 

④コマごとに文章にしてみる/2ページ漫画は8~12コマ

 

さて、みなさんは現状の自分にとって面白いアイデアと出会いました。ここではさきほどのカンチョーをしたら学年で一番怖い人だった、にしてみましょうか(このアイデアも、私がこの原稿を書きながら3つめに出したアイデアです)。そうすると、今度はコマ1コマ1コマで描く内容を文章化してみます。

これは、初心者だからすることです。基本的に、漫画は絵で見せるものなので、経験者はわざわざコマごとの情報を文章化はしません。これをすると、かっちりしすぎて勢いのないネームになってしまいます。ただ、初心者はいきなりネームを切ろうとしても具体的に何をやってよいのかわからないのでするだけです。

 

現代漫画の標準的なコマ数は、2ページで8~12コマです。なので、上記アイデアを8~12段落の出来事の羅列にしてみます。

例えば、

1.学校校舎。チャイムが鳴る。

2.教室の様子。掃除の時間。

3.主人公、ほうきをギター替わりにふざけて歌を歌っている。

4.主人公アップ(幸せ絶頂)

5.主人公の視線。目の前の友人にカンチョーチャンス!!思い悪魔のような笑顔でカンチョータイミングを狙う。

6.思い入りカンチョー。

7.絶叫の声が友人と違う。

8.よく見るとそれは学年一の不良。

9.不良に思い切り睨まれる。

10.血の気が引く主人公。

11.不良に思いきり殴られる主人公。

12.カメラが引いて終わり。

 

みたいな感じです。コマごとに情報を整理して、ネーム以降で描く絵を決めていきます。

 

とりあえず、今日はここまでにしましょうか。

 

⑤まとめ

 

私が今日一番言いたいのは、漫画を描くにあたって、いきなホームランを狙わずに、システマチックに、原稿を確実に仕上げていく勧めです。

確かに、なんかわからないけど漫画を描いてみたらそれがすごい出来で、「ヤングマガジン」に掲載され、それが連載になってコミックスバカ売れ。やー、オレ、ちょっと本気を出しただけなのに。みたいなことは憧れはしますが、現実にはほとんどありません。

 

みなさんのまんが道が、案外平等なのは、1作めでホームランを打つ生徒さんは、その後、かなり苦戦します。例えば1作めが掲載されてしまうと、2作目からは掲載・連載が前提になってしまうので、技術がない分だけ編集のリテイク要求に対応できません。

逆に、受賞や掲載までに何作もかかった生徒さんは、これまでの失敗体験で沢山漫画について考えているので、編集のリテイクに上手に対応出来たりします。

 

漫画家は、アーティストである一方、職人でなければなりません。とにかく、こだわる(こだわりすぎる生徒さんには逆のことを言いますが)。

 

もう1つ、これもとても重要なのは、アイデアは最初に出て来たものは基本的には使わない(最初に出て来たアイデアがホームランということはまれにありますが、その場合も他に10個ぐらいのアイデアを出してみて、やはり最初のアイデアがよかったという検証が必要です。)。とにかく代案を沢山考える、そしてこれはみなさんの今後の漫画家人生を左右することであるということです。

世の中でストーリーテリングが上手いと言われている漫画家、浅野いにおさんだって、羽海野チカさんだって、一見、一筆書きのように見えますが、よくよく見るとエピソードとエピソードの間には、筆のコントロールの跡が見えます。

 

という感じです!

 

プロになるための10作のうちの1作がたかが2ページ漫画でよいのか?という疑問には、いーんです!!とカビラさん並みの元気の良さで答えます。

 

2ページ漫画作りの続きは明日にでも。

 

それでは。