ガチ漫画初心者が、10作描いてマンガでデビューするための方法(リアル)

14年間漫画家志望者と一緒に短編漫画を作り続けてきた私が本気を見せます。なんて。見てね♡

2作目 8ページ漫画を思いきり描こう!! ④

こんばんは。地上に舞い降りた最後の天使こと田中裕久です。

みなさんはここ地球で楽しく生存されていますでしょうか?

私の方は生存しつつ、こうして無事にコラムを書いています。

 

さて、4回にわたってお送りしてきました2作目についてなのですが、今回が最終回です。がんばっていきましょう。

 

①特に主人公の「何故?」にこだわって深掘りしていく。

昨日までで、私たちは一応ボールペンを使ってのプロットを作っていたのでした。

こうでした。

1.ボールペンで文字を書いてインクをめちゃくちゃ消費している主人公。

2.回想:これまでは授業中も放課後もノートに勉強に関係のないもの、好きな子の名前だったり、全国の都道府県の羅列だった利を書いていた主人公。そこにヒロインが来て、何らかのエピソードで主人公に「勉強しなよ」と言う。

3.回想戻り:勉強をするようになった主人公はそれまで学年で最下位だった順位が一番になるほど急激に学力がアップする。東大を受験したい何らかの動機(ヒロインがらみかな)。

4.東大試験。途中ボールペンのインクが切れるアクシデントなどがありつつも、無事試験を終える。

5.見事東大に合格。ヒロインがらみの目的を達成する。

 

99パーセントの漫画家志望者は、これで満足してネームに入るのですが、私たちはここで満足してはいけません。何故ならば、このプロットは、作者の私自身何故そうなのかがまったくわかっていないからです。

まず、主人公が何故ボールペンオタクなのか。何故ヒロインは主人公に勉強するように言うのか。何故主人公はそれに従うのか、などです。こういった何故にきちんとした答えがないと、読者が納得する原稿になりません。

 

②良い短編漫画の主人公は、続きが読みたくなるキャラクターであるべき

さて、ここでは主人公のキャラクターを深掘りしていきたいのですが、短編漫画における良い主人公とされる人物については実はかなりはっきりした答えがあります。それは、「ストーリーが終わった時、そのキャラクターの今後が見たくなるキャラクター」「読み終わってしばらくの間、そのキャラクターが読者の頭に残り、また会いたくなるキャラクター」です。大手編集部の編集者に聴けば、だいたい以上のような答えが返って来るはずです。

私たちは、短いページながらそれを目指さねばならないのですが、どこでそれを出していくかと言えば、①で指摘したキャラクターの何故?です。

まずは、主人公が何故ボールペンおたくなのか。何故ボールペンのインクをそんなに消費したいのか。この理由を、読者が魅力的に見えるように考えていきます。

イデア出しは、例によって最初に出て来たアイデアではなく、10個ぐらい出してそこから選びましょう。

・主人公はこの世の全てのボールペンのインクをこの世からなくそうとしている。

・死んだ父が遺言で「ボールペンのインクを沢山使う人生を歩め」と言った。

・ボールペンのインクの匂いを嗅いでいると、とてもエッチな気分になり恍惚感に浸る。

・理由はない。

・書いている間、ボールペンと会話をしていて、ボールペンにギブアップをさせたい。

・ボールペンのインクの匂いを嗅いでいると、とても落ち着く。逆にその匂いを嗅いでいないと不安になる。

・昔好きだった女の子に借りたボールペンを使った時に初恋をしたので、その衝動が残っている。

・昔好きだった女の子がボールペンフェチで、いつもボールペンで何かを書いていた。

 

出ましたね。正解が。書いていて不安だったのですが。

こんなのはどうでしょう。主人公は小学生の頃、好きだった女の子がいつもボールペンを使っていたので、その匂いを嗅ぐととても落ち着いた気分になった。その子が転校してしまったのでいつしか自分でボールペンをいつも使い、匂いを嗅ぐようになった。その好きだった子が、イントロで主人公のクラスに転校してくる。

一気にヒロインの問題も解決しました。

ちなみに、こういうストーリーが始まる前のエピソードを、私たちはバックストーリーと呼んでいます。

 

③困りました。。ストーリーがページ数に収まらなくなりました。

 

そうすると、ストーリーを若干修正する必要があります。

1.ボールペンで文字を書いてインクをめちゃくちゃ消費している主人公。ノートに魚編の漢字をひたすら書いている。その時、すごくかわいいヒロインが転校生としてやって来る。

2.回想:小学校の頃、好きだった女の子がいつもボールペンを使っていて、隣りの席の主人公(コミュ力低め)はその匂いを嗅ぐのがとても好きだった。明るいヒロインは友達が多かったが、常に主人公にも明るく対応してくれて、主人公は彼女にほのかな恋心をいだいていた。しかしある日、彼女は転校してしまう。

3.回想戻り:その転校生が主人公が昔好きだった子だったとわかる主人公(相変わらずコミュ力低め)。ヒロインは主人公に気づき、「学校のことを色々教えて」と言う。赤くなりながら魚編の漢字を書き続ける主人公。ヒロイン、主人公のボールペンを褒める。そして、自分もいまだにボールペンを使っていることを告げる。2人は同じメーカーのボールペンが好きで使っていた。うれしい主人公。

4.ヒロインは受験勉強をひたすらボールペンを使ってやっていた。主人公はこれまで勉強などしたことがなかったが、ヒロインが東大を目指しているのを知り、自分も東大に行こうと決める。成績がみるみる上がる主人公。

5.見事東大に合格。ヒロインがらみの目的を達成する。

 

困りました。これでは8ページにストーリーが収まりません。主人公とヒロインの恋、主人公の東大への合格を描こうとすると、どうしても32ページ以上は必要です。

 

④軌道修正 キャラクターは頭の中で出来ているので修正します。

 

さて、上記のプロットだと、主人公の成長譚は描けません。ただ、私はこのボールペンでひたすら文字を書く主人公が好きです。なので、このキャラクターは活きにして、東大を目指す話、ストーリーの方を切ります。創作は時に、こういう見切りも必要です。

で、次は何を考えるかと言えば、8ページ中、6~7ページめで見せられる面白い絵だったり出来事、出来ればヒロインがらみで、を考えます。

今考えたのは、「耳なし保一」じゃないですが、肌の主人公がヒロインに体中にボールペンで文字を書いてもらう絵です。ギャグもしくはシュール系漫画です。これで行っちゃいたい気もしますが、これは一応お手本漫画なので、こういうニッチなものはやめておきましょうか。

で、またアイデア出しです。この主人公・ヒロインが活きで、2人が一番見栄えのする6~7ページのアイデアは何か。

・2人でカリカカリカリひたすらボールペンで字を書く。

・お互いの手にボールペンで字を書き合う。

・1本のボールペンをシェアする。

・ボールペン部を作る。

・時間が飛んで、老人になっても2人でボールペンで字を書いている。

・クラス全体がボールペンフェチになっている。

・2人で般若心経の写経をしている。

・彼女は絵を、主人公は文字を書き、相田みつをみたいな感じになっている。

 

困りました、良いアイデアが出ません。

 

⑤何が悪いのか、この状況をどう打破するのか。

 

書きながら気づきました。このプロットは、相当何かがないと上手くいきません。というのが、ボールペントいうものを題材にしたのがまず失敗で、これがアイテムとしてニッチすぎる。ボールペンの匂いフェチというのが、読者の共感を得られないので、主人公が変わっている型のキャラクターにならざるを得なくなり、結果、体中にボールペンで字を書いてもらっているというニッチなフェチズムが一番良いアイデアになってしまうのです。これが投稿作だったらこのまま押していってもよいのかもしれませんが、一応お手本的なものにしたいので、今度は「主人公の成長・変化」の方面から考えてみます。ボールペンで字を書くのが好きだった主人公がどう成長変化すれば物語が変わるのか。

すぐにアイデアが生まれました。主人公がボールペンで文字を書かなくなればよいのでます。

周りの人たちとのコミュニケーションを一切遮断し、ひたすら文字を書き続けていた主人公が、初めて文字を書くのを止めて、ちょっとだけみんなとコミュニケーションを図れるようになる。

よかった~。これで一応話が出来ました。

そのために、バックストーリーやエピソードを若干変えます。

1.主人公はクラスの誰とも話したことがない青年。ビジュアルは超絶イケメンだが、いつもひたすらボールペンでノートに般若心経を書き続けている。主人公はボールペンの匂いを嗅ぎ、般若心経を書くと心が落ち着くのだ。美人な転校生がクラスで紹介されるが、一切興味を示さない主人公。

2.回想:小学生の時、隣りに座っていた女子がボールペンで字を書くのが好きだった。そのかすかなインクの匂いを嗅ぐのが主人公が一番好きな時間だった。主人公が人生で唯一クラスメイトと会話をした一言、それは「そのボールペン、良い匂いだね。どこのメーカー?」だった。その子は転校してしまった。

3.回想戻り:主人公はそれ以来同じメーカーのボールペンを使い続けている。転校生が隣りに座り、ノートに文字を書き続ける。彼女も同じメーカーのボールペンを使っていた。ちょっとだけ気になる主人公。ヒロインに「あ、同じメーカー」と言われる。ヒロインは主人公が唯一話したことがある女の子だった。ヒロイン「もしかして、田中君?」

4.ヒロインが隣りでほとんど自分の代わりのように文字をカリカリ書いてくれるので、初めてクラスを俯瞰する主人公。見ると、結構色んな人がいて、楽しそうに会話をしたり、音楽を聴いたり、青春をしている。ボールペンのほのかな香りがする。「what's the beautiful world」と呟き、それまで悟れなかった般若心経の意味が分かる主人公。隣りの席のヒロインに、「オレ、青春しちゃって、いいかなかぁ」

5.主人公は相変わらず般若心経をかりかりノートに書いているが、クラスメイトに「あ、あのさ、田中、お前に恋のお守り書いてもらうと成就率跳ね上がるって聴いたんだけど、書いてくれないかな」と言われる。「いいよ。けど、チェリオ1本な」ノートの切れ端に般若心経を書いて渡す主人公。超かっこいい。それを見てウインクするヒロイン。

 

⑥まとめ

 

みたいな感じでどうでしょうか? とりあえずざっくりですが、プロットを作ってみました。これは、ヒットではありません。ボールペンというアイテムがニッチすぎたのとアイテムを上手に使いきれていない気もします。これで持ち込みに行っても、編集者さんに結構渋い顔をされる気もします。けど、画力で主人公をかっこよく、ヒロインとの会話を爽やかにかっこよく描けば、担当さんがついてくれるぐらいにはなるかもしれません。

今回、一番大事なのは、昨日までのプロットのストーリーを切って、主人公のキャラを立たせようとしたことです(そんなに成功しているとも思いませんが)。みなさんもストーリーに困った時は、キャラクターを立たせる方を優先してみてはどうかと思います。

おしまい。