ガチ漫画初心者が、10作描いてマンガでデビューするための方法(リアル)

14年間漫画家志望者と一緒に短編漫画を作り続けてきた私が本気を見せます。なんて。見てね♡

3作目 16ページ漫画を落ち着いて描こう ③

こんにちは。田中裕久です。みなさんは楽しい水曜日の朝をお迎えでしょうか?私の方は朝日に向かってモンゴル式の鷹の舞いを披露したところです。

 

①プロの漫画家はとにかく濃い原稿を作っている

 

私が今日みなさんとシェアしたいのは、プロの漫画家は普段編集者ととてつもなく濃い原稿を作っているということです。これは、ストーリーもそうだし、エピソードもそうだし、キャラクターはもちろんだし、演出も、全てが漫画家志望者よりも格段に濃いいです。画面にしても、描き込みや画面の大きさなども含め、やはり濃い原稿を描いています。

以前、「漫画家志望者あるある」でも書いたのですが、私はこれまで14年間、漫画家志望者と一緒に原稿を作り、生徒は持ち込みに行きましたが、プロの編集者が驚きを持って「この原稿濃いいですね」と言ったのはわずか2~3作品です。私はこれまで1000作以上は確実に作品を作っていますから、どれだけ多くの漫画家志望者がプロよりも薄い原稿を作っているかはわかると思います。

我々が持ち込みをした時に担当してくれる編集さんは、普段井上雄彦さんの担当編集さんかもしれません。いつも野球で例えるのですが、井上雄彦という、160キロぐらいのスピードボールが出せるピッチャーの球を、普段編集さんはキャッチャーとして受け取っているのです。我々が現状出せる球の速さはよくて140キロぐらいのものでしょう。草野球ならば「すごいね」と言われるかもしれませんが、プロの世界では全然通用しない速さです。そんな我々が「この作品はこんなもんでよいだろう」「物語が破たんしちゃうからここは抑えよう」みたいに自分でセーブをかけてしまうことは、とてもとても危険なことです。それでは、プロのキャッチャーと本気のキャッチボールができません。

 

②では具体的に、どこを濃くすればよいのか。

 

では、どこを濃くすればよいのか。みなさんはまだ3作目ですから、基本的にどこを濃くしてもよろしいのですが、以前私が体験した「濃いい原稿」の話をいくつか。私の教え子で「描き込み」がとにかく好きな生徒がいました。丸ペンを1ページで1個使い終えちゃうぐらいの描き込み度合いです。彼は「ヤングジャンプ」で月間ベスト賞を取りました。その後彼はプロアシになり、連載作家になりましたが、私の教室でその原稿を懐かしそうに見て「今から見ると描き込み方がまったく素人だけど、プロになってしまった今の自分には描けない情熱がありますね」と言っていました。また、別の生徒さんはホワイトを筆に付け血しぶきのように吹き付けることをしていましたが、吹き付けすぎてホワイトで立体物を作ってしまいました。持ち込みに行った編集者は大爆笑で「チャンピオンレッド」で特別期待賞をもらいました。どちらも、もちろん掲載には至りません。そういうプロの技術はないけれども、情熱がほとばしっている原稿をプロの編集者は好みます。

 

③濃いキャラクターとは何か

 

このように、色々な面で作品を濃くすることができるのですが、一番理に適っていて、編集者受けが良い「濃い原稿」は、主に主人公など、登場するキャラクターが濃いい原稿です。名作と言われる作品ならば押しなべてキャラクターは濃いのですが、例えば「おぼっちゃまくん」の主人公、御坊茶魔などはいかがでしょうか? あれが、プロの濃さです。翻って漫画家志望者の原稿を思い出した時、私は、あんなに濃いいキャラクターに出会ったことは1度しかありません。その1回とは、「変態戦士 アブノーマルマン」という持ち込み原稿でしたが、絵は90年代ジャンプのいわゆる「古い絵柄」でしたが、持ち込む先々でとっても高評価でした。お見せ出来ないのが残念ですが、とにかくそのアブノーマルマンのキャラクターが濃くて濃くて、編集者は半笑いで「こんな濃い原稿、雑誌に載せられるわけないじゃないですか」と言ったそうです。それは漫画家志望者にとっては、最高の栄誉です。私たちも、ぜひぜひ濃いいキャラクターを作りたいです。

 

④暗く重たい話は濃いのとは違う

 

このように濃いい原稿の話をすると、多くの初心者の方は暗く重たい話を描きます。それは、暗く重たい話の方がドラマチックだし、一見濃そうに見えるからです。かく言う私も、創作経験が浅い時は、とにかく暗く重たい話ばっかり作っていました。親友が死んだり、主人公が孤児の美少女を拾ったり。もうね、「レオンか!」って話ですけど、その当時は大真面目にそんな話を書いていました。がんばってはいるんです。がんばって書いてはいるのですが、力の入れどころが違うのです。私は、3作目を描くみなさんが暗く重たい話を書くのは反対です。何故ならば、それはとても難しいから。これがキャリアを積んだプロの漫画家さんや上級の漫画家志望者ならば話は別なのですが、私たちはまずは、暗く重たい、劇的な話はやめましょう。そこでの濃さは必要ないです。

 

⑤明るく楽しい話を描こう

 

なので、明るい話を楽しく描きましょう。「おぼっちゃまくん」を思い出してください。「稲中卓球部」を思い出してください。どこにも暗く思いたい要素はないけれど、そこに登場するキャラクターたちは綺羅星の如く濃いいキャラクターです。濃いいキャラクターを短いページで立たせる方法については、また後日やりますが、まずは、明るく楽しいお話を目指し、そこで出来るだけ、自分の中のフルスロットルで濃いいキャラクターを描くことが、私がみなさんの3作目に求めることです。これは、みなさんが最終的に「ハチミツとクローバー」みたいな作品を作るときにも役に立ちます。ああいうシリアスな話でも、現代劇ではユーモアの要素は求められますから。 

 

⑥まとめ

 

と言う訳で、今日は 結構大事な事を話した気がします。とにかくキャラクターを濃く。シリアスにならずにコミカルかつ明るく。私は、みなさんがこういう3作目を書くことを現役のプロの漫画家さんが肯定してくれると確信を持って言えます。ぜひぜひそういう作品を3作目で描いてみましょう。