4作目 24ページ漫画を丁寧に描こう③
こんばんは。今日の雨はすごかったですね。みなさんは楽しい月曜日の夜をお過ごしでしょうか?私の方は今日も教室の引っ越しの準備で漫画本を段ボール27個に入れました。やー、いつの間にか集まった漫画。すごいですね。
さてさて、今日もやりましょうね。前回は「感じの良いキャラクターを作ろう」というようなお話をしました。
今回はそこから進んで、そのキャラクターにドラマを起こそうというお話をします。
①24ページで描けるドラマ
短編漫画というのは、どこまで行ってもページ数というのが付きまといます。例えばですが、ボーイミーツガール。男のこと女の子が出会ってからお互いに好意を持ち、良い感じなり、すれ違いが起こり、それが解消されて2人がお付き合いするまでにはショートカット抜きで描くと60~70ページぐらいかかります。
また、私たちが観る2時間の映画は190ページから250ページぐらい。コミックスで言うと1巻から2巻ぐらいになります。
なので、2時間の映画を観て、同じようなものを作ろうと思っても、それはなかなか上手には出来ないことになります。
以前、映画監督の岩田ユキさんとお話をしていた時に、岩田さんは映画の序盤から中盤にかけて、主人公にこれでもかという情けない思いをさせると仰っていました。その方が、映画の後半に主人公ががんばってくれるから、と。映画と同じ長さの漫画を描くならばとても参考になる意見ですが、24ページでは、主人公に情けない思いをさせているうちにページが尽きてしまいます。
私たちはやはり、24ページ用のドラマを作るべきなのです。
②主人公たちは既に知り合いの方が良い
このようにして24ページ漫画を考える時、まず注意したいのは、主人公とヒロイン、主人公とその仲間たちなどを含めたコミュニティを、出会ったところから始めないということです。先ほども言ったように、ドラマを出会いから始めるとページ数がかかるので、もうカップル・コミュニティが出来た状態からドラマを始めるのが短編漫画の基本になります。
もちろん、カップルが、あるいはコミュニティメンバーが出会ったシーンも大事です。しかし、それは回想の形で中盤に入れれば大丈夫です。構成力があれば問題なく出来ます。
それよりも、まずイントロはそのカップル、コミュニティがいかに魅力的か、前回のコラムで言うところの「感じの良い人々」かを読者にアピールしましょう。
例えば、イントロは深夜のファミレスでもよいかもしれません。ファミレスである集団がおしゃべりをしている。そのおしゃべりの内容だったり、メンバーの容姿(しぐさやしゃべり方も含む)が読者にとって好ましければ、読者はきっとそのコミュニティに興味を持ってくれます。
カップルでもそうです。主人公とヒロインあるいは主人公とヒーローがデートをしている。それでは、どんなデートをどんな服装やどんなスケジュールで行っていると読者にとって応援したくなるカップルに見えるか。例えばですが、高所恐怖症の彼が、ヒロインの要望で一緒に観覧車に乗っていて、やっぱり高いところが怖くて、というところから始まるデートシーンなんかだと私としては2人のドラマが観たくなります。
③24ページからはしっかりとした構成力が求められる
短編漫画は、なんの計画もなくなんとなく描いてみたら24ページだった、32ページだったでは上手になりません。お仕事でもそうで、普通、担当さんから今回は40ページをお願いします。というオーダーが来ます。我々は、そのページ数ピッタリのドラマを用意しなければなりません。
その時にとても便利なのが、以前にもご紹介したページ数とエピソード数の因果関係です。また載せますと、
9段落←→16ページ
11段落←→24ページ
13段落←→32ページ
15段落←→40ページ
でした。
なので、今回私たちは24ページ11段落の物語を作ればよいのです。
11段落のストーリー作りは、私は結構得意です。何故ならば、例えば先ほどのデート漫画だったら、1段落めは高所恐怖症の主人公と「大丈夫?」と心配する彼女。2段落めは「高いところ苦手だったら言ってくれればよかったのに」と言う彼女と「大丈夫大丈夫」と強がる彼氏。という具合に2段落を使う。あと、回想で2人が出会い、お互いが好きになるエピソードを1つ入れるという具合に、思いついたエピソードからプロット用紙に入れていけば、11段落ぐらいはあっという間に埋まるからです。
もちろん、上記だけでは、核心的な物語のテーマだったりクライマックスのシーンだったりがないので、もう少し考えねばなりませんが。
ただ、プロットを沢山作ったことがある私には、11段落のプロットを作ることはそんなに難しいことではないとお伝えします。理由は、何度も作るうちに、構成力が身についたからです。
④24ページ漫画のテーマについて
短編漫画にテーマが必要かという問題については私も色々考えたのですが、やはり、必要です。作品にテーマがないとあまりにも散漫な印象になってしまいます。
それでは、24ページ漫画ではどのようなことをテーマにしたらよいのでしょうか?
当たり前ですが、人間とは何か。生と死とは何かみたいな大きく重たいテーマは、普通扱うのが無理です。
それよりも、日常生活でみんなが潜在的に思っているけれどもなかなか言語化出来ないようなことをテーマにした方が断然面白い漫画が出来ます。
というと、高橋留美子さんの短編漫画がほとんどそれにあたることがわかります。
あのように、何気ない日常にちょっとした異物が入って来たり、日常の中で起こる人間ドラマを、気張らずに、しっかりとした構成で見せていくのが24ページ漫画なのです。
先ほどの観覧車のカップルだったら、夜のシーン、男の子が女の子に何かプレゼントを渡すのですが、その日一日でかいた汗で、堤袋がぐちゃぐちゃになっている、けれど、女の子はそれも含めて「ありがとう」と言う。ぐらいがちょうどよいのではないかと思います。もしくは、男の子が女の子にあげるプレゼントがいかにも高所恐怖症の子が選びそうなもので、それを見て女の子がときめく、みたいな。
⑤劇的なドラマは長いページで
私たちはせっかく漫画を描くのだから、短いページでも人が死んだり、トラウマが解消されたりする劇的なドラマを作りがちです。しかし、そういうドラマは長いページの方が有利で、短いページ、少なくとも32ページ未満の作品には向いていません。そして、大事な事は、短いページのドラマを薄味で描くのであっても、しっかりとした人間ドラマを作る練習をすることです。それが出来て、初めて長いページの、劇的なドラマが作れるようになります。薄味のドラマであっても、劇的な濃いいドラマであっても、出て来るのは人間であり、そこには我々人間が普遍的に持っている人間としての感覚が描かれるわけですから。
⑥まとめ
と言う訳で、今日は24ページ漫画で何を書くべきかを考えました。みなさんには、ぜひアイデア出しをしてもらい、24ページで描くべきテーマを見つけてほしいです。学園者などにすると、ちょうどよいテーマが見つかりそうです。
ぜひ頑張って探してみてください。