ガチ漫画初心者が、10作描いてマンガでデビューするための方法(リアル)

14年間漫画家志望者と一緒に短編漫画を作り続けてきた私が本気を見せます。なんて。見てね♡

4作目 24ページ漫画を丁寧に描こう④

こんにちは。みなさんは楽しい朝をお迎えでしょうか? 私の方は新しく買ったロングジャケットを着ているので大変楽しい朝です。お洋服はね、本当によいですね。着ているだけで幸せな気持ちになります。

 

さてさて、このコラムも中盤にさしかかりまして、今日は4作目の最後です。「感情線」についてお話ししましょうね。

 

①「感情線」とは何か

 

「感情線」と私は呼んでいますが、これはイントロ1コマめから、ラスト、最後のコマまでの主人公及び周りのキャラクターの一連の感情の動きのことを言います。長編漫画もそうですが、短編漫画では特に、キャラクターの感情の動きが短いページの中に凝縮されるので読者はそのキャラクターの感情を追っていると言っても過言ではありません。そんな時に、キャラクターの感情がブツ切れていたり、読者が違和感を感じる感情の動きをすると、せっかく感情移入していたのに一気に冷めてしまいます(それが伏線になっている場合もまれにありますが)。なので、私たちはイントロからラストまで、文字通り、一連の流れでキャラクターの感情を丁寧に描く必要があります。これが滑らかかつダイナミックな作品が基本的には良い短編漫画の条件になります。もちろん、日常系のだらだら漫画のような感情線の起伏が少ない漫画もありますが。

 

②みなさんは濃い原稿が描けているか

 

以前、濃い原稿の話はしましたが、みなさんがこれまで描いてきた短編漫画で、主人公が悲しみを我慢して唇をかみしめ、それでも悲しみを堪えきれずに嗚咽を漏らすようなシーンはあったでしょうか? おそらく、ないと思います。少なくとも、私はこれまで漫画家志望者の原稿を読み続けてきましたが、そういう工夫をする生徒さんはとても少なかったです。みなさんは、漫画原稿の1ページの3分の2ぐらいを使った大ゴマで、不良の主人公が半笑いでライバルを睨みつけるようなシーンを描いてきたでしょうか?おそらく、描けていないと思います。私の教え子の吉沢くんは、デビュー直前、そういうシーンばかりを好んで描いていました。雑誌に載った時に、他の漫画家に負けない濃いい原稿を描くためです。

私は、こういう「濃い」「薄い」の話をする時に、いつも料理の話をします。私たちがお金を出して外食をする時、たいていのレストランは料理の味が濃いです。逆に家庭料理では、胸やけがしたり水が飲みたくなるような濃いい料理は出てきません。外食をする時は、せっかくお金を出しているのだから、多少体に悪くても味が濃いものを食べた方が「美味しい」という印象がお客に残るからです。漫画も一緒で、読者がお金を出してわざわざ読んでくださる原稿は基本的には濃いい味の方が良いのです。

 

③ドラマに感情の起伏を付けよう/感情を精密に描こう

 

漫画家志望者が何の工夫もしない原稿を描くとき、たいていの場合はプロの漫画家に比べて薄い原稿を描きます。日常のほほん漫画を除けば、これは多くの場合、よろしくないことです。まず私たちは、主人公がうれしいときは喜びを爆発させ、悔しくて泣いちゃうぐらい濃いドラマを作りましょう。その方が読者は感情移入してくれる確率が高いです。

主人公がものすごい恐怖を感じる、というシーンなどもとてもよいです。イントロでそういうシーンがあると、読者は思わずみなさんのドラマに釘づけになるでしょう。

もう少し高度な技になると、主人公が本当は大声で泣き叫びたいのだけれど、仕事中だから、諸事情があるから泣かないで無理をして笑うシーンなど、とても効果的です。主人公に生まれて初めての恋人ができ、それがとても素敵な人で仕事中思わずにやけてしまうシーンを描きましょう。これもとても効果的です。

初心者の方はいわゆる喜怒哀楽をはっきりと、大きく。中級車の方以上は人間の複雑な感情を精密に描くと、読者はその作者が作った感情の波に乗って、気持ちがだんだんとシンクロしてきます。

そういう計算を、ぜひみなさんにはしてほしいのです。

 

④主観的演出と客観的演出

 

私たちはこういう演出を「主観的演出」と「客観的演出」と呼んでいます。主観的演出とは、作者がその場面場面でどういうシーンを描きたいのか、キャラクターの感情をどういう風に描きたいのかです。客観的演出は、そういう自分の描きたいものを一度脇に置いて、自分が作ったドラマが客観的に見てどう見えるか。自分の演出意図通りに読者の気持ちを誘導できているかどうかを言います。

押しなべて、初心者は主観的演出が強くなりがちです。それは当たり前の話で、まずは自分の描きたいものを描けばよいのであり、読者にどう見えるかを4作目で考える必要はあまりありません。ぜひぜひ、濃い原稿を目指し、演出力フルフルでキャラクターに迫真の演技をさせてください。

少しだけ先回りすると、5作目以降は客観的演出、自分の原稿が読者にどう見えるかという視座が必要になります。しかし、これもあくまで途中の段階であり、9作目・10作目、本当に賞を取ったり掲載される作品を作るには、「自分の描きたいもの=読者が見たいもの」という原稿になる必要があります。

ここでは、みなさんには主観的演出を求めます。

 

⑤キャラクターの感情が動くシーンを丁寧に描く

 

もう1つ。キャラクターの感情線を描いていのに大切なのは、キャラクターの感情が動くシーン、濃い味の漫画だったら大ゴマで、薄味の漫画だったら繊細なコマ割りで丁寧に描くということです。読者は漫画の全てのコマを丁寧には読まないので、キャラクターの感情が動くシーンを適当に描いてしまうと読み飛ばしてしまい、キャラクターの感情についていけなくなるケースがままあります。そうならないように、大事なシーンにはくさびを打ち込むように、しっかりと、精密に、丁寧に、描きましょう。

逆の言い方をすれば、短編漫画とはそういうキャラクターの感情が動く大事なシーンとシーンの間をいかに上手に繋げていくかということでもあります。

大事なシーンをしっかりと描き、それを上手に繋げることができてはじめて、みなさんの原稿のキャラクターの感情線は繋がると言えるでしょう。そして、それを積み重ねていくのが長編漫画なのです。

現在、短編漫画はどちらかと言うと長編漫画の練習という位置づけになっていますが(短編漫画集はよほどのことがないと売れないので)、それを前向きに捉えれば、将来そういう長編漫画家になった時に上手で長い感情線を引く練習だと捉えることもできます。

 

⑥まとめ

 

キャラクターの感情線の話を1つのコラムにまとめようとしましたが若干無理がありましたかね。これは結構深い話と言うか、これが出来たら一人前の漫画家さんとも言えることなので、また後日触れます。今日は、濃いいシーンを作り、そのシーンとシーンの間のキャラクターの感情線を繋げるとよいという程度に覚えておきましょう。