ガチ漫画初心者が、10作描いてマンガでデビューするための方法(リアル)

14年間漫画家志望者と一緒に短編漫画を作り続けてきた私が本気を見せます。なんて。見てね♡

5作目 32ページ漫画を本気でがっつり描こう①

こんばんは。雨がざんざん降りますね。外でお仕事な人はさぞ大変なことだと思います。かく言う私も今日は傘を持っておらず雨に濡れて帰宅しました。

 

さて、このコラムも今日から初級編から中級編に入ります。みなさんは今日から中級者です。中級車になると、センスの良い方、元々画力がある方はぼちぼち賞を取り始めます。賞を取るのが全てではありませんが、賞金で食べる焼き肉はさぞ美味しいと思いますよ。

 

①起承転結って知っていますか?

中級者の方に今更聴くのも何なのですが、みなさんは「起承転結」という言葉を知っていますね? 起は物語の起こり、承はそれを承けて物語が展開し、転では物語が転じてクライマックスがやって来て、結でハッピーエンド。という感じです。これは国語の教科書にも載っているので高校生でもわかります。

では、この起承転結、それぞれのパートで私たちがやらなければならないこととは何ですかね?

起はわかりますね? いわゆる5W1H。ここがどこで、主人公とヒロインが誰で、彼らがどういう状況にいて、何故そういう状況にいるかなどを説明するパートです。

転は物語がクライマックスに入って、少年漫画ならば見開きで主人公が敵陣に突っ込む、少女漫画ならば今まで勇気が出なかった主人公が大好きな先輩に勇気を出して告白をする的なパートです。

結は後日談。主人公がかっこよく去って行ってもよし、このドタバタはいつまでも続くという感じでもよし、実は主人公の知らないところで新しい敵が生まれようとしているという感じでもよし、ようは、なんでもよいのです。

上記、起・転・結のパートでやるべきことはわかりますね?

では、承って何をするパートでしょうか? みなさんわかりますか?

 

②承がやることが一番はっきりしていない、けど、一番大事。

私の考えだと、起承転結のうち、一番大事なのが承です。そして、上手な作家と下手な作家の差が一番出るのも承の部分です。

最初に言ってしまうと、承で主にやることは3つ。

1.読者の作品への、主人公への感情移入の度合いを高める。

2.作者の趣味嗜好・美意識・世界観などを読者とシェアすることで読者に作品を好きになってもらう。

3.アイテムやキーワード・セリフなどを使って伏線を張る。

です。

この中で一番大事なのは①の感情移入です。いつも言うのですが、例えばみなさんが原稿を描いていて、転の部分、クライマックスだけを井上雄彦が描いたとしても、読者は「この漫画はクライマックスだけが尋常じゃない画力と演出力の不思議な漫画だ」と感じるでしょう。それは、中盤までで感情移入が完了していないからです。

②の美意識・世界観などもとても大事です。みなさんは経験がありませんか? 「この作者のセンス好きだなぁ」とつくづく思うことが。私はよくあります。それは、ストーリーには直接関係ないけれども実は感情移入と繋がっていて、例えば「天空の城ラピュタ」の地下道でパズーとシータが目玉焼きを食べるシーンなどは何度見ても「よいなぁ」と感じてしまいます。そして、それが読者の作品への態度を前向きにさせます。

 

③みなさんのこれまでの作品は承がちゃんと機能していたでしょうか?

以上のような承の役割を考えた時、みなさんのこれまで描いた原稿は承の部分がきっちり機能していたでしょうか? おそらく、ほとんどの方は機能していないんじゃないかなと思います。実際に、漫画家志望者の方が私に見せてくれる原稿のほとんどは承の部分がザルです。私たちは、イントロで紹介した5W1Hに感情移入をしてもらうために承の部分を相当戦略的に描かなければなりません。短編漫画は短距離走なので、もたもたしているとあっという間にページがなくなってしまいます。

初心者・中級者によくある誤解は、イントロで主人公のプロフィールを説明しただけで読者に主人公を紹介し終えたと思ってしまうことです。

例えばですが、私田中裕久のプロフィールをここで紹介したところでそれが私の人間性と何が関係あるでしょうか?

田中裕久 40歳。千葉県出身。千葉県在住。漫画教室運営。趣味はお酒を飲むこと。睡眠時間が長い。みたいな。

もしも私が私の人間性をみなさんに伝えようと思うならば、例えば私が初めてお付き合いをした人とこないだ20年以上ぶりにfacebookで繋がったとか、最近の悩みとか、そういった個人的な事情をエピソードで伝えることが効果的じゃないでしょうか?と思うのです。それをやるのが「承」です。

 

④なので、「起承転結」は厳密には「起承承転結」

なので、私は物語を5分割して、起承転結ではなく、承を2つ入れて起承承転結にしています。先ほどの山場だけをプロの漫画家さんに描いてもらう例を考えるとわかるように、短編漫画の勝負と言うのは、実は転の前で決まってしまっています。そこまでで、「けっ、この作家つまんないなぁ」と思われていたら、そもそもページを飛ばされてしまうでしょうし、例え読んでくれても山場で急に「主人公がんばれ」みたいな気持ちにはならないと思います。逆に、転までで「この作家好きだわ。面白い」と思われていると、山場が更に予想を超える展開を示した時、「この作家の単行本が買いたい」とか、「アンケートにこの作家を入れよう」となります。そのための承2つなのです。

ハリウッド映画など、山場に次ぐ山場のような展開だと「起承転転結」のようなストーリーラインになりますが、承が薄い分、キャラクターの掘り下げなども充分ではなく、映画好きな人からすると、「けっ、ハリウッド商業映画が」みたいな感じになります。

この承の役割は本当に重要なので、あとで実際に例を示しながら説明をしていきますが、ここでは、短編漫画においては承が大事。そして、承の役割は読者にイントロで紹介した主人公に感情移入をしてもらう、と覚えてください。

 

⑤伏線には先付けと後付けがある

先ほど示した承の機能のうちの1つ、伏線を張るということについてですが、伏線にはプロットの段階で想定している先付けと、ストーリーを描いている中で思いつく後付けがあります。これは不思議なことですが、面白いストーリーが描けているときは、イントロで何気なく主人公に言わせたセリフが後半で上手いこと繋がったり、中盤で出したアイテムを後半で活かせたりします。これは、おそらく面白いストーリーというのは人間の真理に近いのでそういう繋がりが生まれると思うのですが、自分の描いているストーリーの精度のチェックにもなります。

アイテム・セリフ・キーワードの役割についてもまた後日お話したいのですが、ここではそういうものが潤滑油になって、物語が滑らかに、昨日話したキャラクターの感情が動く場面と場面の間を滑らかに繋ぐものと考えてください。

 

⑥まとめ

と言う訳で、今日から中級編に入りました。話がより複雑になっていきます。このコラムは文字ばかりで読むのが大変だとは思うのですが、ぜひがんばって面白い短編漫画が描けるようになりましょう。